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文学部長挨拶

文学部とその学びについて
文学部長
中井 真之
文学部長 寺田 俊郎

 上智大学文学部は哲学科、史学科、国文学科、英文学科、ドイツ文学科、フランス文学科、新聞学科の7つの学科から成り立っています。文学部は大正2年(1913年)の上智大学創立当初からある学部であり、当時はドイツ人のイエズス会の神父様が多かったことから、哲学科、ドイツ文学科がまず文学部の学科として開設されました。昭和3年(1928年)に英文学科、昭和17年(1942年)に史学科が新たに設置され、戦後になって、昭和23年(1948年)に上智大学が新制大学に切り替わると、すでに昭和7年(1932年)に専門部に設置されていた新聞学科が文学部の所属となりました。その後、昭和34年(1959年)に国文学科、昭和41年(1966年)にフランス文学科が文学部に増設されました。(現在の外国語学部、総合人間科学部の諸学科も以前は文学部に所属していましたが、それぞれ昭和33年(1958年)、平成17年(2005年)に独立した学部を為すようになりました。)
 現在文学部に所属する7つの学科は、それぞれが開設以来の長い年月の中で培ってきた伝統と時代状況に応じて発展を遂げてきた独自の体制を有していますが、「人文学」を教育・研究分野としている点で共通しています。「人文学」は英語ではhumanitiesと言い、文学部はFaculty of Humanitiesと表されます。humanitiesは「人間性」を表すhumanityの複数形ですので、「人文学」は「人間性」に関わる学問と言えるでしょう。「人文学」はヨーロッパのルネサンス期に興った「フマニタス研究」(studia humanitatis) の伝統に根差しています。この「フマニタス研究」では古代ギリシャ・ローマの原典資料の研究を通して「人間性」の陶冶が目指されたのです。「人文学」をこととする文学部も同じように、哲学、歴史、文学、ジャーナリズムの分野における様々な言語、民族、地域、時代の原典資料(テクスト)を読み解き、それぞれの学問の文脈において批判的に考察・評価し、そのことを通して今を生きる私たちの「人間性」をより普遍的なものへと高めていくことを目標としています。
 文学部では講義とともに演習(ゼミナール)形式の授業があり、こちらの方を特に重視しています。この形式の授業では、受講者は教員や他の受講者とともに原典資料(テクスト)の読み解き方、その分析や解釈の仕方をめぐって議論し、資料(テクスト)に関連するテーマについて先行研究を踏まえて研究発表をし、その後発表内容についての質疑応答と討議が行われます。そのようなプロセスを通して各受講者は自分なりの思考を練り上げていき、最終的にその思考の成果を論文等に表します。このような演習(ゼミナール)形式の授業は、19世紀初めに設立され近代的な大学のモデルとなったベルリンのフンボルト大学における教育と研究の一致という理念に由来します。それによれば、演習(ゼミナール)において学生は単に受動的に教員から知識を与えられるのではなく、いわば教員と対等な研究者として能動的に研究に取り組むことを通して自らの人間形成を目指すものと考えられたのです。文学部でもまた、各学生が主体的に研究に取り組むことで、自らのうちに自立的な思考、コミュニケーション能力、表現能力、語学能力を育むことを目指しており、そのための場として演習(ゼミナール)形式の授業を特に重視しているのです。そしてその成果は、これまで文学部が大学等の高等教育機関や研究所、中学・高等学校に勤める教育者や研究者を数多く輩出してきたことにも表れています。
 文学部には7学科および基盤教育センターの教員が協力し合って運営している文学部横断型人文学プログラムがあります。このプログラムは文学部所属の異なる学科の学生がそれぞれの専門の枠を超えて一緒に研究を行うことで、新しい学びの環境が生まれることをねらいとしています。身体とスポーツをテーマとして、これを歴史、文化、社会、政治、メディアなど様々な文脈で考察する「身体・スポーツ文化論コース」、舞台芸術、造形芸術、音楽、映像芸術などの芸術ジャンルに関して、作品の分析・解釈・享受のための能力とともに、芸術の創造・受容・保存・普及に生産的にかかわるための実践的な知識の習得を目指す「芸術文化論コース」、日本列島における日本文化の多様性に注目する〈内からの視座〉と世界における日本イメージの多様性を検証する〈外からの視座〉を総合して、新たな日本の〈素顔〉を追求する「ジャパノロジー・コース」、横断型人文学プログラムはこれら3つのコースに分かれています。様々な学科の学生が専門的な知識と関心を背景に、それぞれのコース内で設定されたテーマについて一緒に考え、意見を述べ合い議論することで、専門の枠の中では得難い新しい考え方、感じ方に接する機会が得られます。自らの人文学的研究の幅を広げ、専門研究の問題について別の観点から考察する可能性を開くこともできるでしょう。
 文学部で培われた人文学的教養は、政治・経済・社会・科学技術の急激な変化が絶え間なく起こる現代社会においても、事態を分析・考察し、その時々の状況に応じて適切な判断を下し対応するための基礎的な力を与えてくれます。本来の教養とは出来合いの知識から成るものではなく、状況の変化に応じて常に新たに作り変えられることで考察や判断にあたってのその普遍妥当性を高めていくものです。人文学的教養はこれまでそのような教養の役割をずっと果たしてきましたし、これからも果たし続けることを私は信じて疑いません。