演出家の川口智子さん、舞台俳優の山田宗一郎さんをお招きし、ドイツ文学科の専門科目文献演習Va「多和田葉子の戯曲」でリーディングをしている作品『オルフォイスあるいはイザナギ』を用いたワークショップを行いました。
『オルフォイスあるいはイザナギ―黄泉の国からの帰還』は、1997年にドイツで制作されたラジオ劇です。タイトルからわかるように、ギリシア神話オルフェウスとエウリュディケと日本神話イザナギとイザナミの物語が素材として用いられていますが、それらは大胆に要素に分解され、新たに組み替えられています。そしてこの新たな神話を語り直すのは、冒頭に登場する「波」です。「波」「漁師」「花」「蛇」「神の末裔(?)」は、それぞれの言葉を紡ぎ、決して代理表象化されることない色彩と匂いを発し、あるがままの世界を成立させ循環させています。
さて、いよいよワークショップの当日。まずは「台本」が渡されましたが、すでに新鮮な驚きです。句読点などが全く予想外のところに打たれ、とても「読みにくい言葉」になっています。川口智子氏からは、これまでの国語教育の中で作られてきた「朗読法」から離れ、まっさらに日本語ということばに触れてほしいというその意図が説明されます。そして、川口氏によるリーディング、そして俳優の山田氏による憑依するかのような台詞読みが続き、すでに圧倒されながら、実際に役を演じたいと名乗り出た学生達が、指導されながら、リーディングに挑戦していきます。最後には教室の明かりを消して、暗闇の中、第一景が通して演じられましたが、私たち全員に、闇の中で、本当にそれぞれの「漁師」「花」「神オーギ」「神イナーケ」がそこにいるように感じられました!!!
週1回の授業では、ラジオ劇として作られたこの作品の、随所に散りばめられたドイツ語の音の遊びを、いかに日本語に移植できるか/できないか、を皆で知恵を出し合って読み進めています。ドイツ語のテキストの向き合うだけの時間もまた重要ですが、しかしこのように、それがどのような空間性と身体性の中で表象されるのかを考えることもまた重要です。そのための気づきを与えてくれた、実に貴重な体験となりました。川口氏と山田氏には情熱的な時間の共有を本当にありがとうございました。


