メッセージ
主に明治時代から大正時代の文学の歴史を調べています。日本文学史のなかで、とりわけ明治時代は激動期の一つだと思います。それまで「戯作者」と呼ばれた者たちは、突然「小説家」「文学者」になり、新式の偉人、青年たちの精神的指導者として社会に君臨していきます。なるべく当時の余熱を宿したかたちで、この展開を再現したいと考えています。
授業では、泉鏡花、田山花袋、島崎藤村、永井荷風、谷崎潤一郎、志賀直哉などの小説を、受講者たちと一緒にじっくり読んでいます。その際、当時の読者の見方、文壇や社会の動きなどもふまえて、作品の表現を考えます。今ままでなかった理解を自分の手で作りあげる楽しさを知ってもらうことが目標です。私は受講者たちの意欲的な分析や調査から、多くのことを学んでいます。
文学や文化が非社会的なのだと言う人もいますが、そんなことはありません。新しい物語や修辞や思弁を発明することは、少しずつ人の心を変え、ひいては共同体のあり方を変えていきます。頼山陽の『日本外史』が明治維新の原動力の一つになったことは、よく知られています。文学や文化の働きに目を向けることで、われわれがどこからやって来たかを考えましょう。