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2026.03.06

2022年度入学 Y.W.さん

<交換留学> アメリカ:Seattle University

上智大学の交換留学制度を利用し、2024年9月から約9ヶ月間、アメリカのシアトル大学(Seattle University)に留学しました。現地の人々との交流や授業を通して自分自身を見つめ直し、視野を大きく広げることができた貴重な経験となりました。

授業を通して学んだ社会的アイデンティティ

留学先では、英文学に加えてジェンダー・セクシュアリティに関する授業や宗教と戦争をテーマとした授業を履修しました。英文学の授業では、特にアフリカ系アメリカ人作家や様々な民族的・文化的背景を持つ女性作家の作品を通して、歴史や制度が彼らの生活や人格形成に及ぼした影響について学びました。

また、ジェンダーの授業では、アメリカにおけるセクシュアル・マイノリティの文化や解放運動の歴史を学び、ジェンダーやセクシュアリティに加えて、人種・階級・身体的健常性といった多様な社会的アイデンティティが、人々の政治的・社会的立場にどのような影響を与えているのかを理解することができました。

これらの授業を通して、私自身の社会的アイデンティティに対する意識が高まりました。まず、日本社会において自分が恵まれた社会的特権を持っており、それがこれまでの人生に大きく影響してきたことを実感しました。例えば上智大学で学び、留学という貴重な機会を得られたのは、経済的・心理的に支えてくれた家族をはじめとする恵まれた環境があったからこそだと思います。このような環境の多くは、自分の努力だけで得られたものではないと感じ、今後は謙虚な姿勢で他者に貢献できる人間になりたいと考えるようになりました。

一方で、日本人留学生というマイノリティの立場に身を置いたことで、環境によって自分の社会的アイデンティティが不利に働くこともあると気づきました。例えば、日本で私は民族的に多数派である「日本人」ですが、一歩国外に出ると少数派になります。これまで、特にジェンダーや年齢などを理由に納得のいかない経験をしたこともありましたが、それが自分個人の問題だけではなく、社会的・構造的な問題でもあるのだと俯瞰できるようになりました。社会における規範や制度の多くは多数派によって作られており、その結果、少数派が疎外されることがあるのだと実感しました。

多様性を尊重する社会

シアトルは人種、民族、ジェンダーなどにおいて多様性に富むリベラルな都市であり、滞在を通して「これまでの自分の常識が必ずしも正しいとは限らない」と感じ、自分らしく生きられるようになりました。現地では、自身のアイデンティティや個性を積極的に表現し、多様な他者を尊重することが多くの人々にとって当然の価値観になっていると感じました。日本では「他の人と同じであること」に安心感を覚える傾向があった私ですが、シアトル大学では留学生として日本社会で育った者ならではの視点を受け入れてもらい、感謝しています。授業では学生一人一人が意見を述べ、ディスカッションに貢献することが求められていたのですが、多様な意見が歓迎され、他人と異なる考えを述べることが高く評価された点が印象的でした。

また、現地の人々との交流を通して、社会的アイデンティティだけで個人を判断しない文化が根付いていると感じました。日本社会では、特にセクシュアル・マイノリティの人々が自己開示することには依然としてハードルがありますが、シアトルでは自己紹介の際にジェンダーの代名詞を伝えることが一般的であり、ファッションを通じて自らのアイデンティティを表現する人々も多くいました。周囲の人々もそれを自然に受け入れており、社会的アイデンティティが個人の価値判断の基準にならない社会だと感じました。日本と比較して、シアトルは制度面だけでなく、人々の意識のうえでも包括的な社会が形成されていると思いました。

準備に際して

現地では、英語をどれだけ流暢に話せるかが能力に関する評価に影響することがあると感じ、コミュニケーションが思うようにいかないたびに落ち込みました。留学前にできるだけ英語力を高めておくことで、より多くの学びや交流の機会を得られると思います。授業内容の理解には、英文学や社会、歴史に関する知識が役立つため、上智での学びを大切することが重要だと思います。

一方で、英語がうまく話せない場面も多々ありましたが、教授と現地学生は辛抱強く耳を傾けて下さり、とても感謝しています。しっかりと予習を行い、内容の伴った発言をすれば多くの人が応えてくれると思います。留学生としての視点を歓迎してもらえることもあり、最後まで試行錯誤しましたが、積極的に行動することの大切さを感じました。不安がある場合は、事前に留学生であることを教授に伝えておくと、より参加しやすくなると思います。授業後に質問すると教授は丁寧に答えてくださり、学びやすい環境でした。

また、留学前にはビザの取得や寮の応募、インターネットやクレジットカードの手続き、履修登録、予防接種、奨学金への応募、航空券の手配など様々な手続きを行いました。多くのことが初めての経験でしたが、現地の担当者とのやりとりを通して成長することができました。

最後に

物価高騰や円安の影響により経済的な負担は大きかったものの、交換留学制度や奨学金による支援のおかげで実りある留学生活を送ることができました。出発前は、日本人留学生というマイノリティの立場に不安を感じていましたが、実際には多くの困難を自分で乗り越える過程で、これまで自分がどれほど恵まれた環境にいたかを実感しました。同時に自分の心の狭さや忍耐力の弱さにも向き合う機会となりました。

一方で、多くの人に助けられたことで人に頼ることの大切さを学びました。親切にしてもらうたびに感謝の気持ちが芽生え、今後は自分が他者の力になりたいという思いが一層強まりました。

自然豊かなキャンパス①
自然豊かなキャンパス②
キャンパスに併設する学生寮
キャンパスの近くを走るストリートカー
ダウンタウンから見たシアトルの街並み