American Studiesコースに所属している4年次生のM.I.さんには、卒業論文にいたるまでの英文学科での学びについて語っていただきました
2022年度入学 M.I.さん
英文学科を志したのは、文学を通して、歴史には残らない人々の暮らしや心の在り方を学びたいと考えたからです。高校時代の留学中に、初めて「国語」として英語を学び、正解を求める読解問題ではなく、文学作品そのものと向き合いました。時代背景や登場人物の言葉遣いから、作者の意図や時代の空気を読み解くことを通じて、英文学が持つ表現の豊かさや奥行きに魅力を感じ、大学で英文学を学びたいと思うようになりました。
特に印象に残っているのは、2、3年次に履修した2つのアメリカ文学史の講義です。
1つ目の講義では、講義名である“History of American Literature” という言葉を分解し、誰の視点による“History”なのか、“American”とは誰を指すのか、という根本的な問いから学びが始まりました。同じ出来事でも、語り手の視点によって歴史はまったく異なる物語となります。例えば、南北戦争を指す英語表現“Civil War” と “War of Secession”の違いは、南北地域それぞれの視点によって生じたものです。このように、言葉の背後にある視点を意識することの重要性を実感する講義でした。
また、2つ目の講義で扱った「環境レイシズム」という概念との出会いは、私にとって大きな転機になりました。「環境レイシズム」とは、社会的・民族的に弱い立場に置かれた人々の地域に、社会的・制度的な要因によって有害物質を扱う施設や汚染源が集中しやすく、結果として、アメリカでは人種的マイノリティーが環境被害の影響を強く受ける不均衡な状況を指します。講義では、ボビー・アン・メイソンの『アトミック・ロマンス』を題材に、この問題と重なりあう社会的格差と環境汚染の関係を文学的視点から読み解きました。作中では、20世紀アメリカのウラン工場を舞台として、生活のために健康被害に目を背けざるを得ない労働者の姿や、危険を軽視する管理者の態度が描かれています。人間の生存と犠牲の構図は、現代社会にも通じる深い問題を突きつけているように感じました。
卒業論文では、このような問題系への社会的関心の高まりに影響を与えた著作とも言えるレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を題材に研究を進めています。化学薬品の危険性に広く警鐘を鳴らしたこの作品が、人々の暮らしにどのような影響を及ぼしたのか、またその訴えを支えた表現手法に注目し、カーソンが提示する環境倫理の本質を明らかにしたいと考えています。
英文学科で学んでよかったと感じていることは、何よりも情熱的な教授や仲間に恵まれたことです。研究への情熱に満ちた教授の講義はどれも刺激的で、同級生の中には台詞を暗唱するほどシェイクスピア作品を愛する人もいれば、英文法の奥深さを徹底的に追究する人もいます。そうした仲間の姿に刺激を受け、自分もより深く広く学びを得たいという意欲が自然と高まりました。
また、15~20名ほどの少人数で行われる講義が多いため、教授との距離が近く、授業内外で丁寧に質問や相談を受け入れてくださる環境が整っていることも魅力の1つです。学生同士の議論も盛んであり、互いの考えを尊重しながら理解を深めあう過程で、自身とまったく異なる視点を持つ学生の意見から学びを得る機会も多くありました。
上智大学では、専攻での学びや学業以外にも、たくさんの学びの扉が開かれています。
私自身、興味を持ったことに積極的に挑戦することを大切にしてきました。
他学部・他学科の講義を履修できる制度を活用し、国際経済や経営、環境問題、法医学など幅広い分野にも触れました。文学以外の領域を学ぶことで、物事を多角的に捉える視点を培うことができたと感じています。
語学面では、2年間のスペイン語学習に続き、独学で学んでいた韓国語の講義も受講しています。初級から上級まで学習者のレベルに合わせて段階的に学べる環境が整っており、主要言語にとどまらず22の言語を学ぶ機会がある点も魅力です。また、授業以外にも、大学や学生団体が主催する国際交流や言語交換のイベントも活発で、実際の会話から語学力を磨く機会も豊富にあります。
また、海外研修のプログラムも充実しており、私は上智大学とオーストラリア国立大学が共同主催する「オーストラリア・サミット・プログラム」に参加しました。異なる背景を持つ学生とともに、英語で法律や政治の観点から私たちの未来について考える経験は、視野を一段と大きく広げてくれました。
この4年間、時代を超えて人々の想いや考えに触れ、他者の人生に寄り添うことで、自分の世界を広げることができました。来春からは社会人として新しい挑戦が始まりますが、英文学科で培った知識や経験を糧に、人や文化を穏やかに繋ぐ存在を目指していきます。
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